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新潟市医師会報より

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『9番目の音を探して』『ブルックリンでジャズを耕す』

横田 さおり

人気シンガー・ソングライターであった大江千里さんの、第二の人生を記したエッセイ本。ポップス界で不動の位置にいた大江千里さんは、40代半ばに自分の人生にやり残したことはないだろうかと考え、10代からの憧れであった、ジャズの世界に飛び込むべく、ニューヨークのニュースクール大学(ジャズ&コンテンポラリーミュージック科)を受験した。合格通知が来た時には、その先のスケジュールもすでに決まっており、悩んだが、当時のマネージャーが「スケジュールはなんとかするので、行けばいいですよ。ずっとやりたいって言ってたんだから」と背中を押してくれたそうだ。翌年2008年、47歳で、ニュースクールの一年生としての生活を始めるため、今まで積み上げた日本の生活の99%のものを処分して、バッグひとつと愛犬「ぴーす(peace)」ちゃんを連れ立って、成田空港を飛びたった。

1冊目は47歳からの大学生活での奮闘記。入学当初は、「君の音はジャズになってない」と言われ、アンサンブルのオーディションにも全て落ち、劣等生だったと言う。ポップスで築き挙げたものが、ジャズのスイングを邪魔してしまっていると悩んだ時もあり、20~30代の若者に混じっての学生生活は苦労も多かった。人一倍練習し努力して、ネガティブな気持ちの時でも、大学の入り口で深呼吸し、おはようと気合を入れて入っていく。才能のある若者たちの中で、切磋琢磨し、努力の積み重ねをして来た道のりが、この本には詰まっている。いくつもの挫折も味わいながら、自身の前向きで真摯な姿勢と、情熱がひしひしと伝わってくる。ピアノをかじったことのある人、ジャズを知っている人にはより細かい専門的な部分にもうなづき、理解しながら読めると思う。

2冊目は、そんな彼が、ニュースクール大学卒業後、52歳でニューヨークでレーベルを立ち上げ、一人で一から始めた、ジャズピアニストとしての日々を綴っている。一人で立ち上げた会社で、CD作成から、受注、在庫管理、発送を一人でこなし、グリーンカードを取得し、日々の失敗や苦労、幸せな時間を織り交ぜながらの生活が描かれている。まるで、自分がニューヨークの街角で見ているかのように、空気感や風景や音を感じることができる。『水星に逆らうかのように時にはうまくいかない時もある。しかし、真摯に、諦めずに続けて行くことで、素敵な結果が待っている』と彼は言う。『ニューヨークへ来た頃は、「何しに来たのか」と聞かれても、ついつい小声になってしまっていたのが、今はグラミー賞を取るために!と言ってしまってもいいんじゃないかと思っている』と。ジャズを生業にできずにいる同窓生もたくさんいる中、ジャズピアニストとしてデビューしてからも、コツコツと自分のジャズの世界を広げている。現在はブルックリンで生活し、日々の何気無い出来事や、ジャズピアニストとしての苦労や努力、そんな生活を通して、ささやかなことへの感謝の気持ちや、常にポジティブでいこうという精神が感じられる。そして何より、音楽への愛が伝わってくる。ニュースクールを卒業してから大切にしている『Self taught(自分で自分を教育する、独学する)』という言葉。毎日の練習に、基本のハノンは1時間やるという。またジャズのフレーズをつなげて1曲を作り、それを全部のキーで毎日演奏する。自分という演奏家の指導を自分でやり、ライブ活動しながらも日々の努力を忘れない。毎月開催するニューヨークのジャズバー(Tomi jazz)でのライブ。人との繋がりを大切にする彼だからこその人脈で、他のアーティストとのコラボレーションや、日本での震災後のチャリティーショー。母校(関西学院大学)のグリークラブとの共演。アメリカ各地や南米でのライブ活動に加え、アムステルダムでも演奏している。

昨年、デビュー35周年記念スペシャルコンサートを、出身大学である関西学院と、長年ラジオ番組を持っていた東京FMホールで行った。彼のライブでは、軽快なトークと素晴らしい音楽と共に、音楽が楽しい!ジャズ最高!という思いが溢れている極上の笑顔でピアノを奏でる姿を見ることができる。

ジャズピアニストとしてデビュー後、オリジナルアルバムを5枚、コンピレーションアルバムを1枚、去年の2月には、日本での公演やエッセイ的なナレーションの入ったDVDも出している。昨年8月にリリースした5作目のピアノソロアルバム『Boys&Girls』では、デビュー曲の『ワラビーぬぎすてて』をはじめ、ポップス全盛期にヒットした『十人十色』『格好悪いふられ方』『Rain』などが、Senri Jazzに生まれ変わって収録されている。日本盤には原曲がボーナストラックとしてついているので、これも懐か楽しい。今年の1月にはピアノソロのジャパンツアーを行った。ここでもまた、素敵な演奏を聴くことができ、収録されていないポップス時代の曲もジャズバージョンで聴かせてくれた。

この2冊からは、アラフィフでも、まだまだ夢を持って、いろんなことに挑戦できるぞというパワーがもらえる。彼の、常に前向きで真摯に取り組む姿勢には、教えられるものがたくさんある。そして、どんな困難なことがあっても、ささやかな幸せを見つけ、日々楽しく前向きに過ごさなきゃ勿体無い!という気にさせてくれる。今年の5月にはトリオでのジャパンツアーもある。パワーをもらいに、また聴きに行きたいと思う。

『9番目の音を探して(47歳からのニューヨークジャズ留学)』

筆者・表紙絵 大江千里
発行所 KADOKAWA
発行日 2015年4月17日
定価 1,800円+税

『ブルックリンでジャズを耕す(52歳から始めるひとりビジネス)』

筆者・表紙絵 大江千里
発行所 KADOKAWA
発行日 2018年1月19日
定価 1,800円+税

『Boys&Girls(通常盤CD)』大江千里

レーベル ソニー・ミュージックダイレクト
発売日 2018年9月5日
定価 2,700円+税

 (令和元年5月号)

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