田澤 義人
幼い頃に出会った『PEANUTS』に大人になってから再び夢中になっている。最近街中で『PEANUTS』に登場する代表的なキャラクターであるスヌーピーグッズを目にすることが多いが、元々はアメリカで知らない人はいない国民的コミックである。あのNASAがアポロ10号ミッションで、月面着陸船に「スヌーピー」というニックネームを付けたというエピソードがそれを物語っている。約50年間、たった一人でこの『PEANUTS』を描き続けたのが、チャールズ・M・シュルツさんだ。この人は自分のアイスホッケーチームを作る程のスポーツ好きで、このことは『PEANUTS』に度々登場するスポーツの場面に反映されている。
さて、この『PEANUTS』の主人公はチャーリーブラウンという、一生懸命だが何をやってもうまくいかない男の子である。作者のシュルツさんがスポーツ好きだったこともあって、特にチャーリーが野球をしている姿がユーモアたっぷりに描かれている。この主人公を通して“人生は勝つことより負けることが面白い”というシュルツさんのメッセージが伝わってくる。読者も、負け続けるけれど決してあきらめないチャーリーに自身の心情を重ねるのだろうと思う。そんな主人公のチャーリーに、時にはそっと寄り添い、時にはアドバイスをする飼い犬のビーグル犬、スヌーピー。この世界一有名なビーグル犬を始め、魅力的なキャラクターが沢山登場する。
日本語に翻訳しているのが、詩人であり翻訳家の谷川俊太郎さんである。この日本語訳がとても素敵で、英語の原文と日本語訳を読み比べながら、谷川さんがなぜこのように訳したのだろう?と想像しながら読んでいる。子どもの時と今とでは、物語の捉え方や感じ方が違う。
このPEANUTSファンのために、2016年4月~2018年9月の期間限定で、東京の六本木にスヌーピーミュージアムがオープンしていた。私は昨年訪れて『PEANUTS』の世界観を堪能してきたが、熱心な大人のファンが多い印象であった。この六本木のスヌーピーミュージアムは惜しまれつつ閉館したが、ファンとしては嬉しいことに、今年の12月に東京都町田市に新たにオープンするそうだ。これはまた行かねば…と今から心待ちにしている。
最後に、私の診療所の中待合室には、スヌーピーミュージアムで購入した『PEANUTS』の一コマが飾られている。それを見た人が感想を伝えてくれるのが嬉しい。これからも、私のPEANUTS人生が続いていくのは言うまでもない。
『スヌーピー全集』
著者 | チャールズ・M・シュルツ |
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出版 | 株式会社復刊ドットコム |
定価 | 本体1,600円+税 |
(令和元年8月号)