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新潟市医師会報より

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『ミケランジェロ・プロジェクト』

細野 浩之

ベルギーの小さな美しい街ブルージュに行った際に、ミケランジェロ作の白大理石の彫像「聖母子像」を見ることができました。なんでベルギーの小さな片田舎にミケランジェロの彫像があるのかと思いましたが、その優しい面影のマリア様と少しやんちゃそうな赤ん坊(キリスト)を見ていると眼がウルウルしてきました。ミケランジェロの彫像で唯一イタリア以外にあるものだそうで、ミケランジェロがその当時交易で裕福だったブルージュに来て彫像を作ったらしいです。彫像のことを調べていたら、数奇な運命にあったようで、略奪に2回もあっていました。一回目はナポレオンによってフランスに略奪され、二回目はナチスドイツによって略奪され。それでも、無事に元の教会に戻ってこられた「聖母子像」でした。その運命を知りたくなり、ネットで調べていた時に出会ったのが、ここで紹介する『ミケランジェロ・プロジェクト』です。映画化もされたので、本と映画(DVD)のどちらも合わせて紹介します。

まずこの本と映画の原題は全く違います。原題は本と映画とも『Monuments Men』とつけられています。当初、本が出版された時は日本でもこの原題がつけられていましたが、映画化に合わせて日本ではインパクトをつけ、目立つように、単行本と映画の題名ともに変えられてしまいました。ミケランジェロの彫像のためのプロジェクトでも何でもありません。ただ題名を変えてくれたおかげで、ミケランジェロ大好き人間の私が、ブルージュの彫像を調べていた過程で、引き寄せられてこの本に当たりました。この本は第二次大戦の末期にナチスドイツによって奪われた美術品やそのままにしていれば破壊される運命にあった歴史的建造物を守り、奪われた美術品を奪還するために働いた、武器を持たなかった、名もない兵士たちの記録です。

本はちょっと古いもので、2014年に発行されています。著者は「第二次世界大戦が史上最大の破滅的戦争だったということを、私たちのほとんどだれもが知っている。その戦争による人命の恐るべき損失について知っているし、破壊されたヨーロッパの諸都市の映像も見ている。しかしルーブルのような壮麗な美術館の中を歩き、シャルトルのような聳え立つ大聖堂の静寂を楽しみ、レオナルドダヴィンチの《最後の晩餐》のような荘厳な絵を眺めた者の何人が『どうしてこんなに多くの記念建造物や美術品が戦争で残ったのだろう、こうしたものを救ったのは誰なのだろう?』と考えるだろうか。」と冒頭でのべています。誰にも知られていなかった英雄たちが、機関銃も携行せず戦車も操縦しない特殊部隊が、戦場の前線で当初はもっぱら建造物−教会、博物館その他の記念建造物(Monuments)を戦争の破壊から守り、その後「史上最大の盗み」をし、第三帝国に運んだナチスから文化財を守り、奪還していく話が語られています。ノルマンディー上陸作戦に伴い始められた作戦行動が、一つ一つ、守り、探し、そして奪還していった記録が語られ、ミケランジェロの聖母子像もその中の一つとして語られ、そしてナチスが略奪し、第三帝国に隠し持っていた美術品をどのように探し出し奪還していったか継時的に淡々と語られています。

映画(DVD)ではジョージ・クルーニーがマット・デイモンらとともに、『オーシャンズ11』ばりにメンバーを集めるところから始めて、ドラマチックに美術品を(現金ではなく)ナチスから(ベネディクトからではなく)奪還(盗みではなく)していきます。そのテンポの良さはエンターテイメントとしては非常に楽しい映画です。

ノンフィクションのきちんとした記録を望む方は本のみを、ドラマ仕立てのエンターテイメントを望む場合は映画(DVD)のみをお勧めします。しかしいずれも事実であることには変わりありません。ヨーロッパの美術館巡りを予定されている方は、モニュメンツや美術品を見に行く前に参考に読まれると鑑賞するときに深みが増すと思いますのでお勧めします。自分も、もしブルージュに行く前にこの本のことを知っていて読んでいたら、「聖母子像」に出会った時の感動がまた違っていたのではないかと思います。

人類の宝物である記念碑的建造物や美術品はただそこに昔から漫然とあるわけでなく、命を懸けてでも守られ、ようやくそこに存在しているのです。それらを見られることは至福の喜びです。美術品を守っていくためにはどれだけの人々の努力と命が必要だったのでしょうか。その美術品を目にできる自分たちは、守った人々に感謝しながら鑑賞しなければいけないと考えるのでした。

『ブルージュの聖母子像』
ミケランジェロ・ブオナローティ作
制作年1501年から1504年
聖母教会に所属
ミケランジェロが生涯で唯一、イタリア国外で制作した作品

『ミケランジェロ・プロジェクト』

著 者 ロバート・M・エドゼル(Robert M. Edsel)
翻訳者 高儀 進
出版社 KADOKAWA
発行日 平成27年10月25日
定 価 上下巻とも各 本体840円(税別)

(令和2年3月号)

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