佐藤 雄一郎
読書の時間という贅沢な楽しみは年末年始の休みに満喫することが多いのですが、今年はゴールデンウイークでも楽しむことが出来ました。そういうときのルーチンは、元メジャーリーガー、イチロー選手に関わる本を本棚から引っ張り出すことなのですが、ここでイチロー選手について少し…。本名鈴木一郎、1973年10月22日生まれ46歳、2019年3月21日引退まで28年の現役生活(日本9年、米国19年)で生涯安打数は4,367本、ピートローズ氏の4,256安打を上回る記録です。そこで常に湧いてくる疑問は、なぜ彼があのような過酷な環境で、ここまでしぶとく生き残ることができたのか? プロアスリートの多くは生まれ持った天賦の才能と身体能力など先天的な要素があるはずなのに何が違うのか? たまたま手にした、ペンシルベニア大の心理学教授アンジェラ・ダックワースの著書『GRIT』という書物に解決の一端を見つけた気がします。
GRIT(グリット)とは2016年米国で流行語になった言葉で、ものごとが上手くいくために大切なものは、IQや天賦の才もさることながら「GRIT:やり抜く力」であるというのです。そして、やり抜く力を持つ人は、情熱を傾けられる興味を持ち、高い目的意識をもち練習を欠かさず、成長思考を忘れずに希望に向かって地道な努力を続ける習慣を身につけています。なるほど、イチロー選手のこれまでの言葉やエピソードを披露するまでもなく、彼のキャリアを支えてきたのはそういうことなのだろうと合点がいきます。
本書は3つのパート13章で構成されています。各章ごとに分かりやすい10数個のサブタイトルが付されているので、楽な気持ちでお好きなところから読み始めても良いと思います。私のお勧めは4章です。「あなたにはやり抜く力がどれだけあるか?」にあるグリッドスケールを使って、まずは自分のやり抜く力を測ってみてはいかがでしょうか?
『やり抜く力 GRIT』
著者 | アンジェラ・ダックワース 神崎 朗子 訳 |
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出版 | ダイヤモンド社 |
発行日 | 2016年9月 |
定 価 | 本体1,600円(税別) |
(令和2年6月号)