大橋 美奈子
穗苅 環先生が、2冊目の写真集『フォト俳句 ─わらべ唄─』を8月に出されました。写真だけ、また俳句だけでは上手く伝えきれないものがあります。そこで、そのふたつを合わせたのが「フォト俳句」。写真に添えられた五七五、そのわずか17音が、写真と共鳴してより深い世界観を生み出します。
四季ごとの4部構成です。たとえば、春は糸魚川市の能生白山神社春季大祭、佐渡市の山王祭、夏は白根大凧合戦、新潟まつり、秋は新潟総おどり、遠野まつり、冬は荘内のややまつり、魚沼雪洞まつり。先生は、休日になると賑やかなお祭りを探して撮影の旅にお出かけになります。でも、意外なことに「祭りに行って、祭りを撮らない」のだそうです。お祭りの準備風景やハプニングの瞬間、出番待ちの子供の表情、その土地で暮らす人々など、自由で気取らない、人情味が溢れている写真集だと思いました。今年のお祭りの多くが中止になり残念に思われている方は、ご自宅で体感されてみてはいかがでしょうか。ページをめくるたびに威勢のいい祭りばやしが聞こえてきます。
さて、私のお気に入りの3作品をご紹介いたしますので、なるほどこれは好きな作品だな、と思われた方はもちろん、還暦を過ぎてもなおパワフルな環先生への親近感が湧いた方も、是非是非、お手に取ってみてください。Amazonでも購入できます。
「写真1」は、思わず笑ってしまう子供ならではのハプニング。張り切って早起きしたけれど、肝心のところで眠気に襲われた男の子。こうなってしまうと、もう起きるのは無理そうです。真っ白に塗られたお顔もイケてます。
「写真2」は、頑張る「イクメン」の姿。平成以降、街中でよく見かけるようになりました。その視線の先は、奥様なのでしょうか。
私は「写真3」が一番好きかもしれません。思わずそっと頬ずり。心待ちにしていた赤ちゃんです。「香り」という文字が、授乳後間もないことを連想させます。
俳句の師匠は、今年4月15日に天国に旅立たれたお母さまだそうです。巻末で、お母さまへの感謝のお気持ちを込めた惜別句を詠まれています。
『フォト俳句 ─わらべ唄─』
著者 | 穗苅 環 |
---|---|
出版 | 新潟日報事業者 |
初版 | 2020年8月8日 |
価格 | 1,500円+税 |
(令和2年9月号)