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新潟市医師会報より

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『人生はスラップスティック』

髙橋 美徳

新潟市医師会会報編集委員に20年以上携わり、新潟市・新潟県医師会報、新潟大学同窓会報に投稿されるようになられ、そうした記事の一部をまとめたものが本書である。本を出すなら、一流の編集や校正、装幀デザインを体験することができる大手出版社にしようと思っていたので、文庫本で大いにお世話になっている新潮社を選ばれたそうだ。編集者と校正者は原稿に書いてあることが事実かどうか、徹底的に調べるため、検討する箇所は校正を含め、各ページに約10か所くらいあったという。「事実と異なることを新潮社が出版するわけにはいかないという、意気込みが感じられた」と述べている。今回の初出版を通してプロの編集者・校正者の矜持を受け止め、ご自身もさらにステップアップを果たされたようだ。

装丁は、著者がお気に入りのボックスティシュのデザインを水彩で描いてデザイナーに送り、何点かの候補の中から、最終的にユーカリの枝をモチーフにしたものになったとのこと。実書は両手に収まりやすい大きさと程よい重量感があり、ソフトカバーで持ちやすく、大きめのフォントと余裕のある行間で読みやすい。ページ柱が据えてあり、読みたいところが探しやすいのもいい。数多の書物を手に取ってきた著者らしい出来栄えだ。

タイトルのスラップスティックは著者と同年代を駆け抜けた放送作家・景山民夫のエッセイ集『ONE FINE MESS 世間はスラップスティック』からいただいたそうだ。スラップスティックはアメリカの道化芝居で使われる叩き棒のことで、日本でいうハリセンに当たるものらしい。転じてスラップスティックはドタバタ喜劇や動きの激しいコメディ映画を指すことになった。

82編のエッセイは7つのカテゴリーに分けられていて、「昭和遠景近景」「食べもの」「ぼくらの未来」「エンターテインメント」「読書」「美術展・絵画」「人生はスラップスティック」から成っている。自身を購書依存症と評する著者は、私が想像できないほど多くの読書量をこなす。内容は多岐にわたり、どれも秀逸な出来映えだ。ごく一部について紹介したい。

著書は全て持っているほど大ファンだった消しゴム版画家でコラムニストのナンシー関が亡くなって20年。著者の斬り口鋭い文章は彼女譲りなのかと思わせる。「エンターテインメント」の章で、後にも先にも居ないオンリーワンの天才・ナンシー関ロスから抜け出せないまま、彼女の代わりに「AIナンシー関」の開発に期待するしか無いという持論を展開している。

「プロレスごっこの頃」では、日本中が熱狂した力道山の活躍とその死の真相を明らかに。私もプロレスごっこに熱中したくちなので、四の字固めもコブラツイストもかけられる。著者が思春期を迎えていた頃の大きな出来事として昭和39年の新潟国体、新潟地震、東京オリンピック、昭和38年のJFK暗殺、力道山の死がまとめて思い出されて忘れられないと回顧する。思春期は自我形成に最も重要な時期だ。そして、あの頃は多くの日本人が日本には明るい未来があると信じていた時代であったと懐かしく振り返る。

最終章「人生はスラップスティック」では文章の印象がやや変わり、作家としての才能を発揮している。ショートショートのような「緑色の財布」では失くした財布を探す学生風の男と、彼がうどんを食べたであろう席に座ってしまった著者の無言の神経戦を描き出す。叙景詩的な「リムジン故障す」は映画のプロローグのようで、その後の展開を知りたくなる文章だ。「nanacoギフトカード」では架空請求の特殊詐欺に遭いそうになったエピソードを寸劇の脚本調に描き、最後に上手く落としてくれる。洗濯槽に水没したUSBメモリーはすべてのファイルが残っていたのに、一週間後にはすべて失われていた?!何ですぐにバックアップを取らなかったんだ!メモリー内のデータが残っていれば、本書の内容は変わっていたと述べられていて、失われた作品を思い残念な気持ちに襲われる。ひょんなきっかけで医学部2年生の頃に成人向け雑誌へ投稿することとなり、原稿料を手にされたエピソードも紹介されている。その原稿を読んでみたいと思うのは私だけではないだろう。若かった頃の文章を読み返すのは、気恥ずかしく、つい頭を掻きたくなる感覚だ。手書きの原稿はまさか残っていないだろうが、当時を思い出しながらこっそり再現してもらいたいと思っている。

自分の身の回りに起きたことや自分の考えていることを題材にして、思いのままに書き下ろしたエッセイは著者の姿が浮き彫りとなる。著者は本書を自身の分身といえると「おわりに」で記している。学生時代陸上部だった著者が昭和、平成、令和を通して思策し、疾走してきた記録である。アマゾンでネット販売を行なっているので、ぜひ一読していただきたい。

『人生はスラップスティック』

著者 浅井 忍
出版 新潮社
発行日 2023年7月31日
定価 1,500円(税別)

(令和5年10月号)

  • < 『かちがらす 幕末を読みきった男』他
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