新潟市医師会

  • 新潟市内の医療機関を探す診療科から
    • 内科
    • 小児科
    • 整形外科
    • 皮膚科
    • 眼科
    • 外科
    • 耳鼻咽喉科
    • 産婦人科
    • 精神科
    • 脳神経外科
    • 泌尿器科
    • 脳神経内科
    • 心療内科
    • その他
  • 新潟市内の医療機関を探す地域別から
    地域から探す
    • 秋葉区
    • 北区
    • 江南区
    • 中央区
    • 西蒲区
    • 西区
    • 東区
    • 南区
  • 休日・夜間に病気になったら急患診療センター
  • カラダのこと考えてますか?病気と健康のあれこれ
  • 医師会について
  • 市民の皆様へ
  • 医療関係者の皆様へ
  • 会員の皆様へ
  • 入会申込

新潟市医師会報より

新潟市医師会

『ペスト』

白柏 麻子

日頃、文学とは疎遠な生活を送っている私に、不本意ながらコロナは、静かにゆっくりと読書するという機会を与えてくれました。ネットの情報によると、外出自粛を強いられたコロナ禍で、多くの人が、この『ペスト』を読んだそうです。パンデミックの恐ろしさ、死と隣り合わせになった時の人間の行動がどのようなものかを小説の中に求め、今の自分が、どう生きていったらいいのかを考えたくなったのだと思います。

この本の舞台は、かつてフランスの植民地であったアルジェリアのオラン市で、作者であるカミュの生地です。中世ヨーロッパで人口の3割以上が死亡したという伝染病ペストを通じ、追い詰められた人間の欲望、人生の不条理を、どこか非情な目線でとらえた、フィクション小説です。

物語は、一匹の死んだネズミに違和感を覚えた医師リウーの登場で始まります。その後、ネズミにとどまらず人間へと拡大していく奇病に、しばらくしてから、ペストが原因していると気づかされ、町は封鎖されるのです。当初は楽観的であった市民たちも、感染による死者が増え続けていく中で、ペストにひれ伏してしまうのですが、賃金の高い看護人や、墓堀り人夫に事欠くことはなかった、つまり、困窮の方が恐怖より常に勝っていたということです。やがて、ペストとの戦いが長引くにつれ、人々は疲労困憊し、絶望にも慣れ、不幸と苦痛の感覚が鈍化して、人間本来の姿を失っていきます。そんな中、医師リウーと保健隊のメンバーたちがペストと戦い、ついに、頂上平坦線に到達した後、しばらくしてペストから解放される日が来るのです。このペストとの戦いの姿勢は、必ずしも一様ではなく、多くは、ペストにひれ伏して諦めてしまう者たちですが、中には、投獄を覚悟で町からの脱出を試みる者もいれば、享楽に走る者もいたりと、人間は、様々な反応を示すのです。

最後にカミュは、次のような言葉で物語を締めくくります。

ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり、数十年の間、家具や下着類のなかに眠りつつ生存することができ、部屋や穴倉やトランクやハンカチや反古のなかに、しんぼう強く待ち続けていて、そしておそらくはいつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストが再びそのネズミどもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差し向ける日が来るであろうということを。

文学性の高い作品であるがゆえに、コロナ禍におかれた我々の実体験とすぐに照らし合わせて考えることはできません。この小説が書かれた時代背景から、ペストはナチズムの象徴であり、作中に出てくるペストに対する市民活動は、自らも身を投じたレジスタンスを投影したとも、論評されています。最後に載せた文章から考えられることは、人間は不幸と隣り合わせで、いつ何時、不幸に見舞われるかもしれないということです。コロナを経験した今、まだ、完全に過去形にしてしまうわけにはいかない現実の中で、とりあえずは、今を楽しみ、もし万が一の時に戦うことができる強いメンタルと体力を持つよう、努力していきたいと思います。

『ペスト』

著者 カミュ
宮崎嶺雄 訳
出版社 新潮文庫
出版日 昭和44年10月30日
定価 850円(税別)

(令和6年11月号)

  • < 『生き方』、『京セラフィロソフィ』
  • 『エンジェルフライト(国際霊柩送還士)』 >
新潟市医師会報より
新潟市の素描画
  • 2025年度作品一覧
  • 2024年度作品一覧
  • 2023年度作品一覧
  • 2022年度作品一覧
  • 2021年度作品一覧
  • 2020年度作品一覧
  • 2019年度作品一覧
  • 2018年度作品一覧
  • 2017年度作品一覧
  • 2016年度作品一覧
  • 2015年度作品一覧
  • 2014年度作品一覧
  • 2013年度作品一覧
  • 2012年度作品一覧
  • 2011年度作品一覧
  • 2010年度作品一覧
  • 2009年度作品一覧
  • 2008年度作品一覧
  • 2007年度作品一覧
  • 2006年度作品一覧
  • 2005年度作品一覧
巻頭言
学術
特集
病気と健康のあれこれ
寄稿
開院の自己紹介
わたしの好きな店
マイライブラリィ
私の憩いのひととき
旭町キャンパスめぐり
病院だより
勤務医ツイート
Doctor's Café
理事のひとこと
新潟市一次救急医療施設の利用状況
あとがき
  • トップページへ
  • ホームページTOPへ戻る
  • このページの先頭へ
新潟市医師会事務局
〒950-0914 新潟市中央区紫竹山3丁目3番11号
TEL : 025-240-4131 FAX : 025-240-6760e-mail : niigatashi@niigata.med.or.jp
  • ご利用にあたって
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ
  • リンク
  • お問合せ
©2013 Medical Association of Niigata City.