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新潟市医師会報より

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『土と生命の46億年史』

高橋 美徳

開院祝いでいただいたドラセナやシュロチクの鉢植えは枯れずに維持できているものの、木に元気がなくなってきたので植え替えをしようと思う。植え替えには一回り大きめの鉢と土が必要だ。観葉植物用用土を密林で探すと、中身は木質堆肥、ココナッツファイバー、パーライト、バーミキュライト、鹿沼土となっていた。用土は水はけ具合と栄養分に配慮されて様々な土地から採取、ブレンドされているが人類が作り出したものではない。本書の帯には「生命」と「土」だけは、人類には作れない、と大きく書かれている。

小学校のテストでこのような問いが出題されている。

植物を育てるのに必要なのは、
太陽光と水と  ?  である。

答えは「肥料」だそうだ。土の研究者である著者は、キムタク風に「ちょ、待てよ!」とツッコミを入れる。それは「土」でしょ?水耕栽培でも育つが、植物は根を張り大きく育つため土を求め、協力してくれる土壌微生物を求める。人類は肥料を作り出すことはできても、人工的に土を作ることはできない。

もう一つ、「チコちゃんに叱られる!」風に、じゃあ「土」ってなぁに?

改めて定義をすると、土とは岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物である、と著者は記している。特に重要なのは腐植が生物(動植物や微生物)に由来するため、地球上に生命が誕生する40億年前まで、厳密にいうと陸上に植物が上陸する5億年前まで地球に「土」はなかったことになる。

生命の誕生の前に地球上に粘土が登場し、生命と土が生まれる下ごしらえをしてきたと筆者は語る。粘土は岩石が砕けて2マイクロメートル以下の粒子となったものとされる。46億年前に宇宙から飛来してきた無数の微粒子が、重力によって集まって小惑星が形成され、小惑星どうしが衝突を繰り返して球体となったのが太陽系第3惑星の地球である。初期地球は煮えたぎるマグマオーシャンであったが、宇宙空間への熱放散によって表面は冷え、地殻が形成された。その時の地球内部はまだ高温で比重の大きな物質は深部へ、小さな物質は表面へと分布した。水蒸気は水となり地球表面を覆い、海となった。ケイ素、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カルシウム、リンを含む造岩鉱物は、マントル対流と噴火によって地表で質量の軽い窒素、酸素、水、二酸化炭素と出会うことになる。岩石が風化で砕け細かくなり、粘土大の大きさになると、マイナス電気を帯びるようになる。引き寄せられたカルシウムイオンなどの陽イオンは取り巻きの水分子も同伴してきて、粒子間に毛管張力で水が入り込み粘土は粘るようになる。粘土が粘るのは当たり前と思っていたがこんな原理が働いていたとは驚きだった。粘土は原始大気に相当するメタンや水素、アンモニアを吸着し、そこにカミナリの高エネルギーが作用してアミノ酸が作られたという仮説が紹介されている。また粘土は鉱物として層板構造を持つため、これがDNAの鋳型になったのではないかという可能性も提唱されている。

陸地に植物が上陸して5億年、土壌細菌と協力して植物は生育し、朽ちた植物と微生物は腐植となり土を形成していく。地球は土を100年から1000年で1センチメートルしか作らないそうだ。人類は化学肥料を作り出し、流失する窒素・リン酸・カリウムを土壌に撒きながら作物を育ててきた。しかし現状ではキノコや土壌動物のように、土を作る生物の模倣はできていない。いかに環境汚染、土壌流出を低減し、肥沃な土を維持し劣化した土を再生していくのか。人新世を生き延びるには、さらなる技術や知恵が必要となると述べている。

土を作ろうとする40年をかけたタイムカプセル実験も紹介している。ミネラル・バッグと呼ぶ岩石粉末をナイロンストッキングに詰めたものは先人の「土」研究者によって40年前に埋設された。大変な苦労をして探し出したミネラル・バッグの中身は「土のようなもの」に変わっていたが、団粒構造はストッキングの破れ目から侵入したミミズによる作業だった。タイムカプセルの土は未来の「土」研究者のためにその場に半分残しておかれた。筆者の研究論文には、その埋設地点の正確なGPS情報が必ず記載されている。

薄い一冊ではあるが実に中身の濃い内容で、上質な一連の大学講義を受けた気分にさせられた。刊末にはブルーバックス発刊のことばが書かれている。科学をあなたのポケットに、の主見出しで、「20世紀最大の特色は、それが科学時代であるということです。科学は日に日に進歩を続け、止まることを知りません。(中略)政治や経済など、社会科学や人文科学にも関連させて、広い視野から問題を追究していきます。科学は難しいという先入観を改める表現と構成、それも類書にないブルーバックスの特色であると信じます。1963年9月 野間省一」と記されている。

『土と生命の46億年史』

著者 藤井一至
発行所 講談社
ISBNコード 978-4-06-537838-0
発行日 令和6年12月20日
定価
1200円(税別)
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