山口 雅之
現在、国内では『ワイン王国』『ワイナート』『リアルワインガイド』の3つのワイン雑誌が定期刊行されています。今回ご紹介するのは『リアルワインガイド』です。この雑誌は2002年に創刊され、年4回発刊される季刊誌です。2025年夏号までに90冊が発刊されています。「リアルな視点と本音で綴る、ワインガイド」をコンセプトとし、消費者目線で情報を届けるという、この雑誌の出版社のオーナーであり編集長でもある徳丸真人氏の熱い情熱のもとに発刊されてきました。
他の2つのワイン雑誌が綺麗な写真を多く掲載して、ビジュアルに訴える紙面構成しているのに対し、『リアルワインガイド』はその年にリリースされたワインを実際に試飲してみてのレヴューコメントと点数化(レーティング)が記事の中心です。パラパラめくってみても、お洒落なページは全くありません。こんな地味な雑誌が23年間も発刊を続けられているのは、他の2つのワイン雑誌がどちらかと言うと、スポンサーでもある販売元が推すワインの紹介をメインとしているのに対し、『リアルワインガイド』はスポンサーに媚びないという信念のもとに、ワインの評価を厳格に行って紹介してきたことが、ワイン愛好家に支持されてきたからと思われます。
『リアルワインガイド』は創刊以来、ブルゴーニュワインを軸にワインの紹介を行っていました。ここ数年来、世界第二位の経済大国の転売、投機目的のブルゴーニュワインの買い占めによるワイン価格の異常な高騰と、日本への輸出割り当てが10年前の10分の1まで減少したことにより、日本国内で今までのようにブルゴーニュワインを購入することは困難となってしまいました。このような市場の状況を鑑みて『リアルワインガイド』ではブルゴーニュワインから少し距離をおく決断をしました。『リアルワインガイド85号(2024年春号)』に掲載された「ブルゴーニュ生産者の名言」が『リアルワインガイド』での最後のブルゴーニュ特集とされています。手の届かないところに行ってしまったブルゴーニュワインから距離をおいたと言っても、完全に見切りをつけたわけではありません。コロナ禍までは、編集長の徳丸真人氏が自ら毎年100軒ものブルゴーニュの生産者の元を訪ね、実際に現地で試飲をしてレヴューとレーティングを行っていましたが、今年は厳選した40軒のみの評価をしています。
『リアルワインガイド』で人気の巻頭特集は、毎年冬号に掲載される「旨安ワイン」の紹介記事です。優良ワインショップが推薦した「旨安ワイン」を編集部が実際に試飲をして評価をしています。比較的手に入りやすいものが推薦されていますので、デイリーなお手頃ワイン購入の際には大いに参考になります。今までは年1回の特集記事でしたが、『リアルワインガイド86号(2024年夏号)』からは、「旨安ワイン」がレギュラー化して毎号掲載されるようになりました。これはこれからの日本のワイン市場を支えてくれる新しい世代の飲み手に「お手頃で美味しいワイン」を伝えることを目的としての変更とのことです。新潟市医師会ワイン部の定例会のワイン選びでも「旨安ワイン」記事を参考にさせていただいています。2025年5月の定例会で提供した2024年冬号「旨安賞」に選ばれたボルドー白ワイン、シャトー グラン ジャン ブラン ヴィエイユ ヴィーニュ 2023(1,348円)は大好評で、後からご自分でネット注文されたメンバーが何人もいらっしゃいました。
現在、『リアルワインガイド』は存続の危機にあります。スポンサーに媚びないという編集方針は、読者にとってはワインの正しい評価を知る上で貴重な情報を提供してくれますが、スポンサー企業の確保には苦労するはずです。実際、雑誌内には企業広告は数ページしかありません。現在、『リアルワインガイド』の巻末には「リアルワインガイドの発刊継続を応援しています」の広告ページがあります。ここには『リアルワインガイド』を応援する個人、企業が応援広告を掲載しており、中には医療機関の広告もあります。我々にできる発刊継続応援はこの雑誌を購入することですので、もし書店の雑誌コーナーで見かけましたらレジまでお持ちになって応援活動へのご参加をお願いします。特に12月発行の冬号は「旨安ワイン」特集ですのでお勧めです。
『Real Wine Guide(リアルワインガイド)』
| 出版社 | リアルワインガイド |
|---|---|
| 発行間隔 | 季刊 |
| 発売日 | 3、6、9、12月の15日 |
| 定価 | 1,885円(税込) |
| ネットショップ | https://www.realwine.jp |
(令和7年9月号)