新潟市勤務医委員会委員長 新潟県立がんセンター新潟病院 頭頸部外科 佐藤 雄一郎
はじめに
新潟市勤務医会は医師会の組織力向上、勤務医(B、C会員)と医師会の意思疎通を目的として、2015年7月に第1回委員会が開催されました。一貫して医師の働き方改革について当事者意識を持った活動を継続中です。2018年は勤務医の当直体制に関する調査を、2019年は医師事務作業補助者の現状把握を目的としたアンケート調査を行いました。新潟市内42施設に調査を依頼(回収40施設、回収率95%)、調査結果を用いた現状把握と問題解決のための要因分析について報告します。なお、本稿では正式名称である医師事務作業補助者を、多くの方に馴染みのある医療クラークと表現します。
医療クラーク受け入れ側の現状把握
アンケート結果を図1、図2に示します。丸はアンケート質問事項、四角は回答の概略です。回収率は95%ですので、ほぼ新潟市の現状把握が出来ているものと思われます。最もインパクトがあるのは、医療クラークを雇用している施設が全体の52%という数字です。予想以上に雇用施設が少なかったため、産業界で使用されるFish Bone図を作成し要因分析を行いました(図3)。アンケート結果をもとにブレンストーミングを行い、要因と考えられる項目を、医療施策、医療施設、医療クラークの領域に分けて分類しました。対策として、学生個人の資質や教育に関わる項目は、教育機関と医師会の連携が必要に思われます。また、雇用など待遇面の問題は医師会として各施設に働きかける要素もありますが、診療報酬上の加算に影響される点も大きいので、県市医師会から中央への要望や発信も重要と考えられました。
医療クラーク供給側の現状把握
供給側の現状把握を新潟医療福祉大医療経営管理学部、医療情報管理学科の先生方と面談する機会を設け、現状把握をすることで多くの知らない現実を知ることが出来ました(図4)。そこから共有できた最も解決すべき問題点は、「医療福祉大卒業生が県内医療施設に医師事務作業補助者として入職する人数が少ない」ということでした。そして、その問題解決のために、図5の要因分析図を作成しました。この図から真因を探り出して対策を立てるのですが、早急に実施可能な内容として「医療福祉大の学生へ医療現場からの情報が少ない」、という点に着目しました。そこで、2019年7月に、筆者が新潟医療福祉大医療情報管理学科の学生を対象に医療の現場を伝えるべく講義を行いました。学生の反応は良好で、2018年の医師事務作業補助者受験者数19人、合格率68.4%が、2019年秋の受験者数49人、合格率91.8%と大幅に向上したのは、7月の講義がモチベーションのアップに大きな影響を与えたものと大学側では考えられています。
まとめ
医師の働き方改革では、超過勤務時間の削減や労働時間短縮など、労務管理の適正化が求められています。しかし、このような数字が独り歩きする施策で、はたして、安全確実な医療が提供できるのかという疑問は残ります。今後、日常診療における医療クラークの役割は、タスクシフティングによる医師の労働時間短縮だけではなく、補助内容の質向上による医療安全面での貢献も期待されると考えます。