新潟市医師会勤務医委員会副委員長 新潟臨港病院 内科 窪田 智之
新年を迎えたと思ったら、もう2月ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。2022年は、これまでのコロナ禍での経験を生かして、明るく笑顔に満ちた年にしたいものです。
勤務の傍ら、いつも気になっているのが、「棋界」です。小学生のころから興味を持っていましたが、今はいわゆる「観る将」として、棋界の話題を楽しむ毎日です。
これまで、将棋界を長きにわたり支えてきた棋士は、スーパースター「羽生善治先生」でした。羽生先生の「凄さ」について、プロ棋士、真田圭一先生の解説をご紹介します。
それまでの時代はお互いに「玉」を囲って、自分の得意の形にして、それから勝負していた戦い方で、駒がぶつかってみてからどっちが勝つのか結果がわかるというのが当たり前でした。ところが、羽生先生が15歳でプロになった頃(1985年)を前後して、駒がぶつかる前に勝負が決してしまうようになってしまったのだそうです。そのため、どんどん勝負のポイントが遡り始めるという現象が起き始め、それを理論的に(自分の頭で)埋めていったのが羽生先生だったということなんです。そしてその理論をみんな利用して、すぐに羽生先生の考えているレベルまで、到達できる時代になってしまったのだそうです。
さて、2022年2月12日藤井聡太 最年少五冠が誕生し、今後は全冠(八冠)も視野に入っている状況です。細かい技術的なことは熟知しておりませんが、有識者によると詰将棋解答選手権で5連覇でも裏付けされている中終盤の強さ(読みの速さと深さ)が、ずば抜けており、さらに最近は序盤・中盤の強さもあわせ持ったために、だれも勝てなくなったとのことです。
藤井聡太先生の序盤、中盤、終盤における全く隙のない将棋が、高い勝率を維持するための安定した振る舞いにつながっているのだそうです。常に自分の手が最善手であるかどうかを識別し、「解の安定性」を察知する能力を毎日磨いているのだと。人工知能(AI)による先読み探索、コンピューターを用いてデータから反復的に学習し、そこに潜むパターンを見つけ出す「機械学習」によって、その判断が可能となるのだと。藤井先生は最新版「ディープラーニング」系のAIを使って、研究の先端を走り、そして自分自身で深く考えることをとても大切にされています。
さて、そんな話題の藤井聡太先生の記事や対局結果を一喜一憂しながら、楽しみに待つ毎日です。勤務医としてICTやAIを活用することで、予防~初期診断(序盤)、診断~治療(中盤)、治癒や看取り(終盤)まで、隙のない医療がすこしでもできるように研鑚を積み重ねたいものです。また、患者さんの診察にあたる前に、挨拶や笑顔、姿勢や言葉遣い、紹介状から読み取れる医学的な知識準備などで、すでに実際の診療(治療)が始まった時には勝負が決まっていることもあるのかもしれないなと思う(反省する)今日このごろです。
この原稿が掲載されるころ、藤井聡太先生の順位戦のA級入りが決まっているかもしれません。勤務医の先生方で勤務医ツイートご希望の方は勤務医委員会事務 iura-niigatashi@med.email.ne.jp まで。
(令和4年2月号)