新潟市医師会勤務医委員会 委員長
日本歯科大学新潟生命歯学部 耳鼻咽喉科学 教授 佐藤 雄一郎
私は、14年間勤務した県立がんセンター新潟病院を辞し、2021年4月から日本歯科大学新潟生命歯学部耳鼻咽喉科学に赴任しました。新潟大学勤務のころから数えると約20年振りに、場所は変われども大学という組織へ戻ってきたわけです。活動を始めて約1年しても、まだまだ分からないことばかりで、悪戦苦闘の毎日です。さて、今回は折角の機会ですので、当科の診療内容をご紹介致します。まずは、耳鼻咽喉科は一般的に頭蓋底から鎖骨近傍までの、いわゆる頭頸部領域の疾患を対象に日々診療を行っています。そして、多くの先生方が耳鼻咽喉科で思い出される疾患は、中耳炎、難聴、めまい、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎(通年性や花粉症)、扁桃炎、咽頭炎などがあると思います。他にも、外耳~中耳癌、鼻副鼻腔癌、舌癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌など頭頸部癌と呼ばれる悪性疾患もありますが、当院では現時点で診断まで、治療は他院にお願いしています。それでは良性疾患を中心とした病気の説明から始めます。
①中耳炎:急性、慢性、真珠腫性中耳炎があります。急性中耳炎は外来で保存的治療が可能ですが、それ以外で手術が必要になる症例もあります。
②難聴:加齢性から突発性難聴、メニエール病など多彩です。最近のトピックスは2017年国際アルツハイマー病会議で難聴が高血圧、肥満、糖尿病とともに認知症の危険因子に挙げられたことです。難聴の対応のひとつに補聴器装用があり、今年の7月から新潟市も含めて全県的に補聴器交付の費用に対する自治体助成が始まります。
③めまい:原因は小脳・延髄などの中枢性疾患から前庭末梢性疾患によるめまいがあります。当科では中枢性以外のめまいに対応しています。良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、メニエール病、突発性難聴による平衡障害、自律神経障害など病態は複雑で多岐にわたります。なかには、確定診断が得られずめまい症とされるケースが多くありましたが、最近は持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)という概念が提唱され光明が差し込んでいます。さらに、近年の臨床研究、ガイドラインにより、めまい疾患の概念もすっかり整理されてきました。当科は昨年度からめまい診療の強化に着手しており、私も含めたスタッフのブラッシュアップ(佐藤がめまい相談医取得など)、めまい診療のフロー作成、診療機器の整備が進んでいます。急性、慢性のめまいでお困りの患者さんがおられましたら、是非ともご紹介をお願いします。
④副鼻腔炎、アレルギー性疾患:副鼻腔炎は急性から慢性があり、なかには歯を原因とした病態もあり、その場合は本学の特徴を生かして歯科との迅速かつシームレスな対応が可能です。アレルギー性鼻炎も通年性から季節性(いわゆる花粉症)に分けた詳細なガイドラインの整備が進み、当科ではそこに準じた治療を心掛けています。必要に応じて耳鼻咽喉科ならではの局所処置も併用しますので自覚症状の改善に苦しんでいる方がおられましたらご紹介をお願いします。
⑤扁桃炎、咽頭炎:いわゆる急性炎症性疾患ですが、高熱、経口摂取の低下は外来での治療に限界があります。呼吸困難がある場合は当院の現状では対応が難しいのですが、それ以外は対応致しますので宜しくお願いします。
⑥頸部腫瘍:頸部腫瘍は、甲状腺、耳下腺、顎下腺の腫瘍性疾患から、頭頸部癌の所属リンパ節転移、血液疾患・細菌性・ウイルス性疾患によるものがあります。従来からの造影CT、MRIに加え、患者さん目線の低侵襲診療を目指し頭頸部超音波診断にも力を入れています。初診時の精査で良性か悪性か一定の診断は可能です。もちろん、必要な時は穿刺吸引細胞診、針生検、切開生検も行います。首を触ったらしこりがあるので心配といった方は多かろうと存じます。ご紹介頂けると幸いです。
⑦その他:昨年から頭頸部診察用の最新の内視鏡を導入しました。画像も繊細で頭頸部粘膜の微小病変の診断に有用です。さらに、検査手法としてmodified Killian’ s method(Sakai et al: Laryngoscope; 2014)を用いて下咽頭を広く展開して視認しにくい下咽頭から頸部食道の境界部まで確認しています。また、内視鏡洗浄を効率的に安全に行うためのシステム(オリンパスOER5)を病院として導入しており、いつ、誰が、どのスコープを、どの洗浄機で洗浄・消毒したか履歴を残し一連のトレーサビリティを確保しています。これは、標準的な感染対策と、今後の未知の感染症対策も視野に入れた医療安全にも有効な対策として評価できます。
最後になりますが、日本歯科大学新潟生命歯学部耳鼻咽喉科のスタッフを紹介します。私、医師佐藤雄一郎(平成3年卒)、医師倉橋崇史(平成25年卒)、検査技師塚田なおみ、桑野結香、外来看護師佐藤美千子、熊倉志都の陣容で、月曜から金曜の午前診療を行っています。そこに4月1日から、当科所属で言語聴覚士高橋圭三、理学療法士松本香好美が着任しました。これまで以上に先生方のニーズに応えられるような診療スタイルを目指しますので何卒宜しくお願いします。
(令和4年7月号)