新潟市医師会勤務医委員会委員
信楽園病院 腎臓内科 津畑 豊
ある知り合いから「某若手医師が車検があるからって年休とったんだよ」という話を聞く。少し心がざわつく。
私の最初の反応としては、「車検なんて別に休日でもできるんだからわざわざ平日にやらなくてもいいのでは」というやや否定的な反応。ただ、よく聞けば、前日などに急に決めた休みでもなく、他の医師に業務上の迷惑がかかったわけでもない様子。
車検の期限が迫ってぎりぎりだったのかもしれないし、他の私的な用事をカモフラージュするための嘘だったかもしれない。以前から、ある程度準備された年休であれば、理由なんてなんでもいいのでは、と思っていたが、車検という一見いつでもいいような理由にやや否定的な印象を持ってしまった。改めて年休取得について考え直すいい機会になった。
様々な考え方、価値観をもった勤務医のなかでは、他者の年休の理由を気にする人もいるし、自身の取得理由について配慮している人も多いのが現実だろう。しかし、年休取得が働き方改革の一環として義務化された現状においては、勤務医の中でも、年休取得理由に対する考え方も寛容に変わっていかなければならないと思う。
予定された年休は、それぞれがどのような内容でも好きに使っていいと思う。ただ、休みのために準備をしても、少なからず周囲の人へ協力はお願いすることとなるので、「家でゴロゴロするので」とか「ゴルフに行くので」とは言いづらいかもしれない。具体的に伝えるメリットも乏しいので私用でとの理由で十分だと思う。下手に違う理由をつけて嘘をつくと、背徳感で十分楽しめない(日焼けしたときの言い訳などにも困る)。
年休取得理由の問題はお互いの考え方、認識を変えていくことでなんとかなりそうだが、実際に年休を取る時間を確保できるかは別問題と思う。少し前のデータになるが、平成30年に新潟市医師会が新潟市の勤務医に対して行った当直体制に関するアンケート調査では、年休取得について年間0日が25%、1~3日が23%、4~6日が29%と年間3日以下が約半数認められた。病院や所属科の規模、一人医長など、それぞれの環境によって年休取得調整が比較的容易な人もいれば、困難な人もいると思う。ただ、取得が無理と思っている人も、そこで諦めてしまっては何も変わらない。必ず何かしらの対応策はあるのではないかと思う。少し内容は変わるが、先程のアンケート結果の中に、「当直環境改善のために病院や周囲スタッフの協力があれば実現可能と思われる具体的な改善案がありますか」という問いに、約1/3の先生が「ある」と回答されている。一方で、「改善案がある」と回答した方に対する「その案を実際に院内で提案し話し合うことは可能ですか」という問いには、半数以上が「かなり難がある」もしくは「不可能」と回答している。もちろん、それぞれが考えている改善案が全て実行可能なものであるとは思わないが、中には他の人が考えつかないような素晴らしい案を持った先生がいるのではないかと思った。
年休取得の問題も一緒で、現状を改善するための名案を温めている先生がそれぞれの施設にいるかもしれない。ただ、自ら積極的に改善案などを提案できるような先生ばかりではないと思う。病院管理者を中心として、いろいろな案を提案しやすい環境を作っていき、年休取得を含めた様々な問題をみんなで考え、対応していくことが、より満足度の高い勤務環境の実現につながっていくのではないだろうか。