新潟市医師会勤務医委員会委員
済生会新潟病院 眼科 長谷部 日
今年度より勤務医委員会委員となりました、同年代では数少ない眼科勤務医の一人です。原稿依頼をいただいたものの何を書いたらよいのか分からないので、眼科の勤務医の現況について紹介したいと思います。
今から遡ること30年、私が卒業して医師になった頃に全国的に眼科医が急増しました(まだ前期研修がない時代)。新潟大学眼科に入局した私の同期は過去最多で10人以上おり、その後も大学には毎年6、7人が入局するのが当たり前のような状況が続きました。沢山の若手が県内外のあちこちで研修し、当時は指導医も大勢いましたので病院所属の常勤眼科医は多数でした。県外にも大学の関連病院がいくつかありましたし、県内の中核都市であれば複数の病院それぞれに複数の常勤眼科医がいる時代でした。
この眼科バブルは研修制度が変わるとあっさり弾けてしまいます。大学の入局者は一人でもいてくれれば有難いという状況に一変し、他県では数年間眼科入局者がゼロという所もありました。一方で上級医は次々と退職していきますのでマンパワーは見る見る衰え、関連病院を支えることが不可能となっていきました。若手は指導医もセットにしなければなりませんので、まず県外の関連病院からの撤退が次々と進んでいきました。眼科勤務医が減少の一途を辿る中でやがて県内の病院すらも維持困難となり、いくつかの病院では常勤を撤退して週2、3日の外来診療のみに縮小し、大学医師の外勤だけでやりくりするという運営に変更していきました。
眼科は入局者が多いという昔のイメージが根強く残っているようなのですが、現在は年二人くらいが後期研修医として大学に入局する程度です。一人でも入ってくれれば…と県内の多くの眼科医が願い続け、年度末にほっと胸を撫でおろすということが毎年繰り返されています。毎年一人でも二人でも入るならマシじゃないかという意見もあるので贅沢は言えませんが。新潟県の人口あたりの医師数は眼科も全国最低レベルにあり、適正医師数すらも程遠いということです。勤務医数の回復は今のところ考えにくい話です。
入院加療を要する患者さんが増加している印象です。しかし新潟県内は中核病院にすら常勤眼科医がいないという地域が複数あります。病院常勤医不在、不足の地域では当然患者さんの通院や治療に不利益が発生しています。眼科の急患(しかも軽症)が家族に連れられてはるばる新潟市までやってくるという事は全く珍しくありません。
高齢の患者さんが多いのは眼科の特徴であり、最近は超高齢者の増加とともに開業の先生方と近隣の病院が一体となり基本的な医療圏が形作られるのが本来の姿ですが、新潟県の眼科医療について言えば肝心な病院の勤務医が全く足りていません(前述のように開業医師数も潤沢ではありませんが)。さらに常勤眼科医が在籍する病院もその半数以上が医師一人のみという状況です。このままだと眼科の地域医療は将来さらに厳しいことになるかもしれません。複数の医療圏の上位に医師を集約した高レベルの眼科医療施設があれば…と大学在籍中に夢想していたことがありますが、文字通り夢のまた夢です。
(令和5年1月号)