新潟市医師会勤務医委員 新潟臨港病院 内科 窪田 智之
令和4年10月1日現在の新潟県における65歳以上の人口は716,370人であり、県総人口(年齢不詳は除く)に占める割合(高齢化率)は33.7%です。全国の高齢化率は29.1%であり、新潟県は全国を4.6ポイント上回っています。東京都を含めて、全都道府県が超高齢状態(65歳以上の人口が人口の21%以上)に突入しています。
これまで医師としても仕事外でも豊かに生きることを中心に考えて生きてきましたが、「多死社会」を迎え、今はどうすれば心豊かに最期の日を迎えられるのかを考えることも多くなり(決して人生を悲観しているわけではありません)、自身は少しずつ「終活」もスタートしています。数年前に幸い、生家に住んでいただける人が見つかり、譲ることができました。
さて、勤務医診療において「看取り」は、大変気を遣う業務ではありますが、やりがいのある重要な職務の一つです。自身も毎年25-30例ほどの臨終に立ち合いますが、コロナ禍の影響もあってか、2020年度は4名、2021年度は6名の「在宅での看取り」をすることができ、2022年度(未集計)も同じくらいだったかなと記憶しています。死亡時刻は愛用(自宅)の時計で確認したり、往診時、元気であれば2ショット記念写真を撮らせていただいたり、自分なりにサポートしています。
人生の最期を自宅で終わらせたいという患者の希望をかなえ、看取られた家族や関わった医療者(自分を含む)は一様に「満足感」や「達成感」にあふれているように見えます。父(50)をくも膜下出血、兄(33)を交通事故で突然に失い、お別れができなかった私にとっては、不謹慎ではありますが、なんとなくうらやましい気さえします。ただし、そこに関わる訪問看護師や医師もそれなりのエネルギー(情熱)が必要です。
在宅看取りにみんなでむかうために、①患者と主介護者が在宅での看取りを希望する、②自然の経過に委ね、無理な延命処置を希望しない、③家族ないし看取る人が、ある程度の理解力を持っている、④療養して、看取りを迎えるのにふさわしい環境がある、⑤経済的に可能であるなどの条件が必要ですが、やはり「人生の最終段階」についての本人と家族の受け入れが最も重要かもしれません。
「看取り」において「家族」は主治医の死亡確認や臨終の立ち合いを望んではいるものの、もし主治医が確認・立ち合いできなかったとしても心理的なつらさが強まることはなく、臨終までに頻繁に部屋に行くことで十分な対応であるとの(コロナ禍前の)報告(Palliative Care Research 2010; 5(1): 162-170)もあります。病院でも在宅でも多くの医療者が、小さく、まめに関わりながら看取りを支えることが必要なのかもしれません。看取りにおける勤務医の役割は「病院」や「医師」によって様々ですが、新潟市住民(地域全体)の中で在宅看取りの文化が広がり、看取りの選択肢として、いつでも在宅看取りを提案できる地域医療が育まれることを期待しています。
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(令和5年4月号)