白根緑ヶ丘病院 脳神経外科 小池 哲雄
私が専門としてきた脳外科では、脳出血や脳梗塞を発症した方を治療しますが、両方の病気共に長い間、高血圧を放置していた方に多くみられます。高血圧が続くと、ゴムが持続して長時間に引っ張られると、弾力がなくなりヘナヘナとなってしまうのと同様、身体中の血管も長期間、高血圧に晒されることで血管壁がボロボロ状態となってしまうのです。結果として血液の流れが悪くなって脳梗塞を、血管壁が裂けて脳出血を発症することになります。脳卒中の発症の原因となる主な危険因子は、加齢(歳をとること)、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動(不整脈の一種)、喫煙、飲酒、等の順番になります。加齢については生きていれば全員平等に危険が増す訳なので打つ手はありません。従って最大の危険因子は高血圧になります。血圧の値が高ければ高いほど、脳卒中が発症しやすくなるようです。今までに実施された研究では、下の血圧(拡張期血圧)を3~5年の間に5~6mmHg下げるだけで、脳卒中の発症率は42%減少するとの報告があります。そう!血圧を下げることは最も効果的な脳卒中の予防法なのです。ということで、検診などで高血圧を指摘され、かかりつけの先生へ受診することになりますが、よくある外来での短絡的な会話は「先生、血圧の薬一旦飲んだらやめられないんですよね?(だから降圧剤は処方して欲しくないなあ…)」と患者さん、「そう、血圧の薬はやめられないですよ!」と医師。本来、血圧は、食生活の改善や運動などによるメタボ体質の改善で比較的速やかに低下します。従って降圧剤を一旦服用したら止められなくなるということはありません。通常、血圧が高くても、それに伴う自覚症状は大多数の方は殆どありませんので、皆さんの中でも経験をお持ちの方がいると思いますが、つい自己判断で中断してしまう患者さんが意外に多いのです。医師の言葉は「血圧の薬はやめられないですよ!食生活の改善や運動などでの体重の適正化で降圧したら、要らなくなるからね、それまでは勝手に止めないでね」という意味ですから。
(2019.10.28)