栗田脳外科内科医院 栗田 勇
人は誰でも一生に何度か頭痛を経験することがあると思います。人によっては、それが何日も何日も続いたり、たった1日だったり、又何年も何十年も続く方もおられるでしょう。よく頭痛の種よ、といわれる精神的なもの、悩み、人間関係のトラブル等の心因的なものを含めると、人間は一生頭を痛めている存在といっても過言ではありません。その中でも精神的な原因については、精神科、心療内科の先生方にご相談ください。
一方、頭痛の中でも、脳や頭部疾患で起こるもの以外に、頚椎や眼、鼻、耳、のど、歯などが原因で起こるものもありますし、顔面や頭皮の疾患(例えば帯状疱疹)もあります。中には、ソファーでうたた寝した後によく発生する有名な後頭神経痛などもあります。
ところで、頭痛一般に言えることですが、その発症のしかたから、急性に起こるものと慢性に起こるものに分けられます。まず慢性型の頭痛ですが、それは片頭痛と緊張型頭痛です。
よく自分で片頭痛だと言われる方がおられますが、それは正しい使い方でしょうか?正しくは、頭部の右側、左側など一側性に片寄って起こる(時には両側性も)拍動性の頭痛を片頭痛と定義されています。これは、セロトニンの増減に伴って脳の血管が拡張し、血管周囲のセンサーである三叉神経を圧迫して血管の拍動が痛みとして感じられるタイプの頭痛です。トリプタン製剤という特効薬があります。又、片頭痛の一部に、頻回の吐き気、嘔吐を伴い仕事を休んだりするため、くも膜下出血と間違える例もあり、専門医への受診が必要です。
それに対して、最も多いタイプの頭痛は、(筋)緊張型頭痛で、肩こりや首の周りの筋肉の張りに伴って、後頭部を中心に全体が締め付けられるように鈍く痛むもので、パソコンを仕事で使う人、スマホ中毒の若い方などに多く、長時間同じ姿勢(前屈位)で小さい文字や光る画面を注視し続けることにより起こります。又、仕事で人と対面する場面の多い方や対人関係で緊張しやすい性格の方(いわゆるあがり症の方)にも起こりやすいと考えられています。中には、片頭痛と緊張型頭痛の合併もありますので、安易な自己診断は禁物です。
その他慢性に起こる頭痛の中には、鎮痛剤の飲みすぎによって起こる連日性の薬物乱用性頭痛や、雷が走るような雷鳴性頭痛、脳圧が徐々に高まって起こる脳腫瘍や頭部外傷後に起こる頭蓋内血腫、反対に脳圧が低すぎる頭痛などがあり、専門医への受診が不可欠です。
一方、急に起こる急性型の頭痛は、脳内出血とくも膜下出血が代表的なもので、放置すると死に至るもの、重篤な片麻痺、言語障害、歩行障害などの後遺症を残すものです。
脳内出血は、その大部分の原因は中等度以上の高血圧症です。遺伝、塩分の摂り過ぎ、過労、ストレス、肥満、高脂血症などに注意が必要で、適切な降圧剤の内服や生活習慣の見直しなどが必須です。
くも膜下出血は脳動脈瘤の破裂が原因で起こるものが大部分で、今まで経験したことのない激しい割れるような頭痛と、同時に頻回の吐き気、嘔吐を主な症状とする恐い病気で、放置すると三分の一の方は死に至ります。遺伝性の場合もあり、両親や兄弟にくも膜下出血がある方には、MRI検査を是非ともおすすめします。
(2020.10.30)