新津産科婦人科クリニック 大野 正文
月経について少し考えてみましょう。生理という言葉は「生理休暇」という言い方に使われますが、正しくは「月経」といい、古事記にも記載されているようです。初めてきたときに「初経」、終わるときに「閉経」といいます。現代、生涯の月経回数は平均450回といわれ、昔の50回から大幅に増えています。
月経の仕組みは巧妙に調整されていて、卵巣から分泌されるホルモンによる子宮内膜の変化によるものです。卵子を抱える卵胞からエストロゲンというホルモンが分泌され、卵子が卵胞から放出(排卵)されると、卵胞は黄体となり、黄体からはエストロゲンとプロゲステロンが分泌されます。それらの働きで子宮内膜は肥厚します。排卵された卵子が精子と融合(受精)して受精卵となったとき、受精卵がうまく埋没(着床)できるように準備します。でも、それは女性の一生の中でも多くはないですね。受精・着床しない(妊娠していない)場合、黄体は12日の寿命を終えます(新潟市名誉市民の荻野久作博士の発見)。エストロゲンとプロゲステロンが分泌されなくなると、内膜の肥厚は維持されなくなり、脱落して出血します。それが、月経なのです。
子宮内膜から分泌されるプロスタグランディンというホルモンによって筋肉や子宮が収縮して痛みを引き起こします(機能性月経困難症)。
また、エストロゲンは子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症に影響します。そのために、これらの疾患があると症状が重くなる(器質性月経困難症)ことがあります。輸血が必要なほどの高度の貧血になったり、学校に行けなくなったり、職場を休まなくてはいけなくなったり、家庭での生活に支障をきたしたり、結果的に「年間約5000億円の経済損失」につながっていきます。
月経時のさまざまな症状は病気(月経困難症、日本での推定は約800万人)であり、仮病や怠慢ではありません。月経前から体調不良(月経前症候群)になることもあります。男性は正しく理解して支えることが必要であり、女性は自分にあった治療を受けて月経の悩みから解放されましょう。
学校でも、職場でも、家庭でも自分が持っている能力を発揮できるように、産婦人科医にご相談ください。きっと、答えがみつかります。
(2022.07.28)