阿部胃腸科内科医院 阿部 行宏
ピロリ菌って聞いたことはありますか?
1983年に発見された、人の胃の中にいる菌です。それまでは胃の中には胃酸があるため菌はいないとされていました。
この菌はアルカリ性のアンモニアを作ることで胃酸を中和して胃の中でも生活できます。
正式にはヘリコバクター・ピロリといいますが、慢性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、リンパ腫などとの関係が報告されています。
国際がん研究機関(IARC)による発がんリスクでは人に対する発がん性が認められるグループ1に入っています。ここには有名なアスベスト、ヒ素、6価クロムなどが含まれています。
戦前は世界中の人が保菌していましたが先進国の衛生環境の改善に伴い感染率が低下しています。日本においても若い方の感染は低く高齢になると高くなっているといわれています。
よく、井戸水を飲んでいたから危ないと思っている方がいますが、感染の経路はまだわかっていません。
感染時期は4歳から6歳くらいまでとされており、それまでの母子感染が現在は多くなっていると考えられています。
ピロリ菌の検査としては最近会社の検診などでABC検診というものが行われています。
これはピロリ菌に対する抗体(体の抵抗力)があるかどうかと、胃炎の程度を合わせて判断しています。
ピロリ菌抗体陽性なら感染の可能性が高く、まず胃カメラを行ってください。検査時に胃がんが見つかるなら、まずは胃がんの治療が優先されます。胃がんがないようならピロリ菌を除菌してもらいましょう。
除菌には3種類のお薬を1日2回で1週間飲みます。ペニシリン系の抗生剤が使われますのでアレルギーが有ると治療はできません。必ず主治医にアレルギーの申告をしてください。
治療直後にピロリ菌の除菌がうまくいったかどうかはわかりません。それは少しでも残っていると環境さえ整えば、胃の中でピロリ菌は増えてくるからです。そのため治療直後ではなく、しばらく時間が経過してから除菌判定の検査を行います。検査方法には検査用の薬を飲んでから息を吐く尿素呼気検査と便のなかにピロリ菌の切れ端があるかどうかの便中抗原検査があります。
もし最初の治療で除菌できなかった場合には薬の内容を変えて2回目の除菌治療を行います。その際メトロニダゾールという薬を使用しますが、アルコールが入ると腹痛や吐き気が出るのでお酒は飲まないでください。
ピロリ菌の除菌が成功しても胃がんにならないわけではありません。定期的に胃の検査を行うことで早期発見早期治療ができますのでぜひ胃がん検診を受けましょう。
(2020.05.25)