ひろさわ内科医院 廣澤 利幸
これはとてもやっかいですよね。今どき人前で咳の一つもしようものなら冷たい視線は避けられません。さてこの嫌われ者の咳ですが、症状が始まって3週間くらいまでなら原因の多くは風邪、もしくは風邪の後遺症です。風邪の咳ならそのうち治るはずなので咳止めで治療します。それを過ぎると風邪の頻度は減って、2か月も続くとこれはなんか別に原因がありそうだ、と考えます。そんなに長く咳が続けば、一度は受診されていると思います。まずレントゲン検査と血液検査は受けましょう。肺がんや慢性の肺疾患があるかもしれません。
ところで咳には痰がからむ咳と、コンコンという乾いた咳があります。痰がからむからにはどこかに炎症がありそうで、数か月に及ぶ場合は、タバコ病か副鼻腔炎を伴う気管支炎があり、あるいはもし感染症ならずいぶん特殊な病気を考えます。これってもしかしてタバコかな?と思ったあなた。この機会にぜひ禁煙も考えてください。肺がんになりますよ。
のどに鼻水が下がる感じがあれば耳鼻科の先生にも相談しましょう。副鼻腔炎に合併する気管支炎は少なくありませんし、ときどき喘息を合併する難治性の副鼻腔炎もあります。
さて喘息は、気管や気管支に炎症があって気道が狭まる呼吸困難の病気ですが、時々コンコンという咳が止まらないだけという場合もあります。のどがむずむずする場合やある季節だけ咳が止まらない場合などは、のどのアレルギーかもしれません。また睡眠中に胃酸が逆流して胸やけがある場合も咳の原因になります。
まただれしもが加齢とともに誤嚥しやすくなってきます。高齢者の誤嚥性肺炎はとても多く、脳卒中の既往がある方や眠剤や安定剤を常用している方では特にご注意ください。
それでも5%くらいの人は原因がわからず治療が困難です。止まらない咳は私たち医師にとっても厄介な病気です。かかりつけの先生と相談しながらいっしょに治療を続けていきましょう。
(2022.05.27)