東幸クリニック 内科・外科
森本 悠太
顔や首、背中、耳などの皮膚に黒ゴマのようなものがあるしこりがありませんか?皮膚のできものが潰れて白いものや悪臭がするものが出てきた、皮膚の下のしこりとその周囲が腫れて赤くなったなどの経験はありませんか?
このような症状で受診される方は、アテローマという良性の腫瘤の場合が多いです。本質的には皮膚科の疾患と思われるのですが、昔から皮膚科ではなく一般・消化器外科を紹介受診または直接受診される方も多く、どの診療科を受診するべきか悩まれる方も多いのではないでしょうか?首や甲状腺の腫瘤:内科?外科?耳鼻科?などもそうですね。
アテローマ自体は、本来皮膚からはがれ落ちるはずの垢や皮脂が皮下にできた袋の中に溜まってできるもので、悪性のものではありません。極めてまれにアテローマ内の皮膚がんの報告がありますが、特に気にならなければ即手術!とはなりません。その他の腫瘤の可能性もあります。しこりが気になる場合は一度受診されたほうが安心かと思います。超音波検査や、視触診である程度どのようなしこりなのかを推測することができます。
また開口部が大きく内容物が自然に排泄されている場合は容易に感染をきたすことはないのですが、痛みや熱感、赤くなったなどの症状がある場合は早めの受診をお勧めします。感染が悪化した場合、手術創感染をきたす可能性を考慮し、一期的な切除、縫合閉鎖の適応とせず、切開排膿/洗浄→炎症消退後の再手術をお勧めする場合もあります。小さいものについては抗生剤の投与で一時的に炎症の消退を得られる場合もありますが、基本的には皮下に感染源がある状態ですので、可能であれば排膿を行うべきと考えます。写真は他院で抗生剤投与を開始されたものの悪化傾向となり、当院を受診された背部感染性粉瘤の切開排膿前と切開排膿後3日目のものです。ここまで腫れが強く、広範囲に炎症が及んだものについては、治療開始から治癒まで3−4週間ほど要する場合もありますので痛みや熱感、色調変化(赤み)がある際は早めの受診をお勧めします。
(令和7年8月号)
(2025.08.27)