あおぞら眼科 青柳 摩弥
人類史上、今ほど近くを見る時間が長い時代はなかったでしょう。外出時(車の運転中も?)はスマホ、出勤すればパソコン、帰宅してもテレビは見ないで小さな画面を見ています。また、2020年以降のご時世で、家にこもる時間が増えてしまいました。
このような時代、疲れ目や眼精疲労を訴える患者さんが増えています。
疲れ目は、休息や睡眠で回復しますが、眼精疲労は、眼痛やかすみ、充血といった目の症状以外に、頭痛や肩こりが現れることもあり、休息や睡眠では治りません。眼精疲労の原因は多くありますが、目の水晶体の厚みを調整する筋肉「毛様体筋」の“こり”が原因で起こることがあります。
①長時間の手元の作業;近くを見続けると、毛様体筋は緊張し続けています。作業が1~2時間以上続く場合は、途中で遠くの景色を見て、毛様体筋をリラックスさせましょう。
②近視で度の強すぎる眼鏡やコンタクトレンズの使用;この場合、常に毛様体筋が緊張して眼精疲労を起こしてしまいます。特に新潟県民は「下駄代わりに車を使う」と評されるように、車の運転をする人が多いため、遠くがよく見える度の強い眼鏡をかけていて、近くを見る時もその眼鏡を使っています。近くを見る眼鏡をもう1本作ることをお薦めします。コンタクトレンズを使っている場合は、その上から近見用の眼鏡をかけてみて下さい。
③遠視、老眼;遠視の人は、遠くをみる際、毛様体筋を緊張させてピントをあわせます。近くをみる際にはさらに緊張が強くなり、眼精疲労を生じます。適正な度数の眼鏡やコンタクトレンズを使うと、毛様体筋がリラックスでき、眼精疲労が緩和されます。老眼の場合も同様です。また、「若かった時は視力が良くて、1.5まで見えた」という人は、40歳を過ぎた頃から遠視になる場合があるので、視力に自信があった人ほど要注意です。
④間欠性外斜視、外斜位;間欠性外斜視や外斜位の人はリラックスしていると両眼の視線が開いて1点で交わりません。そのために左右の目の鼻側にある内直筋を緊張させて、寄り目をする必要がありますが、これが続くと眼精疲労を起こします。特殊な眼鏡(プリズム眼鏡)で対処しますが、症状が強いときは目の手術が必要になることもあります。
⑤白内障・緑内障;目の病気が原因で疲れ目、眼精疲労が出る時もあります。ゆっくり進行するので、自覚症状が出ないことが多い疾患です。
以上、眼精疲労の原因を挙げてみましたが、思い当たる症状がある方は、使っている眼鏡やコンタクトレンズを持って、一度眼科を受診してみて下さい。(この原稿を書いている私も、肩が凝ってきました…。)
(2021.09.29)