松田眼科医院
松田 英伸
日本におけるコンタクトレンズ(以下CL)の装用人口は1,500万人以上となり、10人に1人が装用者といわれています。装用方法も著しく多様化しており、例えば装用時間も終日装用(就眠時ははずす)から連続装用(就眠時もいれ続けることが可能)まで、また使い捨てCLの使用期間も1日のものから1ヶ月のものまでと実に幅広くなっています。
CLはメガネに比べ光学的に優れた点が多いため矯正視力の向上が大きく、その利便性から医療用品としては非常に使用頻度が高いものです。しかしその管理は主に装用者自身の責任の下で行われ、その管理に問題があると重篤な合併症を引き起こすことがあります。
この度はこのCLによる代表的な目の合併症について説明いたします。
1.アレルギー性結膜炎
CLによる刺激やCLに付着した汚れが原因で起こります。自覚症状は目のかゆみとメヤニ、充血、異物感が主体です。重篤な場合はまぶたの裏側に乳頭と呼ばれる隆起性病変が出現し眼痛を伴います。
2.角膜上皮障害
黒目(角膜)の表面に傷がついてしまうことで、CLによる目の合併症として最も起こりやすいものです。原因は、CLによる機械的な接触やCLに涙が吸収されることで局所的にドライアイが生じてしまうもの、点眼薬によるもの、また黒目の酸素が欠乏することによるものなど様々です。自覚症状は異物感や眼痛、流涙が主体です。
3.感染性角膜炎
以前、感染性角膜炎は外傷に伴って発症することがほとんどでしたが、CLの普及によりそのピークは10~20歳代と若年者に多く発症する疾患となりました。適切にCLを使用していなかった人に多く発症し、原因となる病原体としては細菌や真菌(カビ)、原虫(寄生虫)と非常に広範囲です。強く激しい眼痛や充血、メヤニ、視力低下をきたします。目の中に炎症が及ぶことも多く、速やかに適切な治療が必要です。治療は原因となる病原体に対する抗生物質の局所投与(点眼や眼軟膏)や全身投与(内服や点滴)、感染病巣の角膜の消毒や切除、重篤な場合には入院加療が必要となります。
4.角膜内皮障害
黒目の透明性を維持している細胞に角膜内皮細胞というものがあります。この細胞は、加齢や目の手術、目の疾患などで徐々に減少しますが、増えることはありません。その他にCL装用によって減少する場合があります。CL装用によって角膜内の酸素濃度が減少してしまうためではないかと推測されています。ただし同じCLを同程度の時間使用していてもこの細胞の減少には個人差が大きく、一様ではありません。この細胞がある一定以上に減少してしまうと、角膜は透明性を維持できなくなり、角膜移植術が必要となる可能性があります。CL長期装用者では若年者にもかかわらずこの細胞が減少していることがあり注意が必要です。
(2024.09.26)