こん整形外科クリニック 近 良明
五十肩とは、肩関節の可動域が制限されている状態(肩関節拘縮)の総称です。五十肩という呼び名は、『俚言集覧』という江戸時代の俗語辞典から引用された言葉で、“凡、人五十歳ばかりの時、手腕、骨節痛む事あり、程過ぐれば薬せずして癒るものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。また長命病という”という一節があります。ちなみにこの時代の寿命は50歳代でした。病院では、肩関節周囲炎と言われることが多く、五十肩とほぼ同じ意味で使われます。またアメリカではfrozen shoulderと言い、日本でも凍結肩とも言われます。
厳密には五十肩は原因がない肩関節の拘縮を意味します。フランス人医師のデュプレーさんが1872年に発表して以来150年経過しますが、原因は未だにわかりません。
総称としての“いわゆる”五十肩には、原因のあるものがあります。車で後ろのものをとるときに肩を捻ったというような小さい怪我をきっかけに肩が動かなくなるもの(外傷性肩関節拘縮)、乳がんの手術後、また糖尿病の悪化に伴う肩関節拘縮もあります。肩甲骨と上腕骨を繋ぐ腱板の断裂、石灰(カルシウム)が腱板に溜まり炎症を起こす石灰沈着性腱板炎は五十肩ではないことになります。
多くの五十肩は、ほとんどみんな良くなりますが、良くなるまでの期間は、人それぞれで、数週間から数年と様々です。しかしながら、痛くて動かせなかったり、夜も痛くて眠れなかったりするのは困るので、治療のお手伝いをさせていただくことになります。治療はリハビリを中心に行います。患者さんの中には、“痛くても動かした方がいい”と言われて無理に動かしている方がいらっしゃいますが、実は、これが逆効果になる場合があります。理学療法士と一緒に、痛くない方向に痛くない程度に地道に動かしていくことが大事になります。手術になる症例は多くはありません。お困りの方は整形外科にご相談ください。
(2023.01.30)