新潟万代病院
堂前 洋一郎、宮坂 大
股関節は体の中で2つしかない丸い関節のうち、体重を支える唯一の関節です。そのほかの関節は曲げたり伸ばしたりしかできませんが、股関節はあらゆる方向に動かすことができます。それゆえ、負担も大きくかかる関節です。
骨の成長は高校生で止まりますので、股関節の形も高校生で決まります。体重を支える関節ですので、股関節の受け皿である寛骨臼の成長が非常に大事です。寛骨臼の成長が不十分、つまり体重をささえる部分が少ないと、10代から股関節に違和感や痛みを覚えます。この寛骨臼の成長が不十分である場合、寛骨臼形成不全といいます。
寛骨臼形成不全は、将来軟骨がすり減って変形した変形性股関節症になる原因の約70~80%を占めると言われています。しかしながら、若い時の症状は軽く、長く歩くと痛みが出るなど、日常生活が困難になることはあまりありません。それゆえ、放置されることも多く、40~50代に病院を初めて受診し診断される方も多くいらっしゃいます。すり減った軟骨を現在の医療では、もとの状態に戻すことはできませんので、症状が軽くても一度病院を受診し、X線を撮影してもらうことが良いと思います。
もし、寛骨臼形成不全と診断された場合、今後自分の股関節をどう使っていくか、考えていく必要があります。長時間立っている、長く歩く、重いもの持つなど、どのようなときに痛みが出るのか、をご自身で把握し、もしその負担を減らした生活が可能であれば、そのような生活に変えることは大切です。また股関節周囲の筋肉が固くならないようにすることも大切です。
それでも痛みが続く場合、寛骨臼回転骨切り術という手術を行います。以前と比較し、傷も小さく筋肉をできるだけ傷めない手術となっており、将来自分の股関節で一生過ごすことができるかもしれない手術方法です。
股関節に違和感や痛みがあるようでしたら、一度整形外科を受診してみたらいかがでしょうか?
(2023.08.28)