おぐま整形外科クリニック
小熊 雄二郎
日常で時々耳にする「テニス肘」についてお話します。
正式名称は上腕骨外側上顆炎といい、1873年Rungeによる記述が最初とされています。病態は肘の使い過ぎによる炎症、変性、微細損傷と考えられています。肘の外側部分を押すと痛い、肘を伸ばした状態で手首を反ると痛いなどが特徴で、日常生活動作例としては重いものを持つとき、ドアノブをひねるとき、ペットボトルのふたを開けるときなどに肘の外側に痛みが走ります。症状が悪化すると、何もしていない状態でも痛みが生じることもあります。30歳代後半から50歳代に多く見られ、成人の1~3%に発症します。テニス肘といわれていますが、実際テニスが原因である症例は全体の10%程度に過ぎず、労働や日常生活における繰り返し動作よる発症が圧倒的に多いようです。
診断は先に述べた特徴と合わせ、X線検査や超音波検査、MRI検査などを補助として使用する場合があります。
治療はまず発症の原因と思われるスポーツや労働を控えます。そして肘の負担を軽減させるテニス肘バンド、痛み止めや湿布などを使用します。痛みが非常に強い場合に限り、ステロイドの局所注射を行うこともあります。その他近年、末梢血全血局所注射、多血小板血漿局所注射、レーザー治療である一定の効果が認められるとの報告があります。痛みが少し落ち着いてきたら、温熱療法や超音波療法、ストレッチ、マッサージなどリハビリを行います。
以上述べました保存的治療で90%以上の患者さんが1年以内に良くなります。しかし、残り10%程度の患者さんには無効、又は十分な効果が得られません。そういった場合は手術治療の検討が必要となります。かかりつけの医療機関とよくご相談ください。
最後にテニス肘は治療後も使い過ぎていれば再発することがあります。怪しいと思ったらスポーツや作業などを適度な量にとどめること、また常日頃からストレッチを行い筋肉の柔軟性を高めておくことをお勧めいたします。
(2025.01.28)