大野耳鼻咽喉科医院 大野 雅昭
鼻血は突然、見えないところから血が出るので慌ててしまいますが、正しく圧迫すれば止まります。鼻の入り口には血管が集まっていて出血しやすい場所があります。鼻を左右に分けている鼻中隔という真ん中の壁のところで鼻の穴の入口から約1cmのあたり、ここをキーゼルバッハ部位と言いますが、この部位から出ていることがほとんどです。ただ年齢による違いもあります。子供の鼻血の場合は鼻いじりが原因であることが多く、ほぼキーゼルバッハ部位からの出血ですが、成人の鼻血の場合は生活習慣病等により血管が弱くなることが原因のため、8割がキーゼルバッハ部位ですが2割は鼻の後方からの出血で止血に難渋する事もあります。
突然鼻血が出てしまったら、まず落ち着いて椅子に座って楽な姿勢で顔を下向きにして、鼻には何も入れず小鼻を強く押さえましょう。押さえる時間は大体10分程度です。この方法でたいていの鼻血は止まります。上を向くと血を全部飲んで気持ちが悪くなってしまうので、必ず下を向いて止めるようにしましょう。よく上を向いて首を叩いたり、鼻を冷やして止めようとしている方がいらっしゃいますがこれでは止まりません。鼻の上の骨の部分を押さえている方もいらっしゃいますが、これも正しい止血法ではありません。ティッシュを鼻に詰めて横になるのは血液を飲み込んでしまうため逆効果です。鼻を正しく圧迫すると8割の鼻血は止まります。ただ圧迫しても止まらない場合や血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んでいる方などは、鼻の後ろの方から出ていることもあるので耳鼻咽喉科医の診察を受けてください。耳鼻咽喉科ではまず内視鏡を使って出血している部位を確認します。次に止血する薬液を浸したガーゼを鼻に入れて応急止血します。最終的に止血用のガーゼで圧迫タンポンする、または出血部位を電気メスで焼いて止血します。
鼻血の予防は鼻を乾燥させないようにすることが重要です。鼻が乾燥すると粘膜が弱って出血しやすくなります。また風邪を引いた際などに強く鼻をかまないようにするのも重要です。
(2022.06.27)