おおつかこどもクリニック 大塚 岳人
2019年12月に中国武漢で発生した未知の感染症はまたたく間に世界中に広がりました。すぐに小さな子供までが知ることとなった「新型コロナウイルス感染症」は2020年2月、ダイヤモンドプリンセス号とともに日本にも上陸しました。連日の報道がずいぶん昔のことのように感じますが、あれからまだ1年しか経っていません。
この1年、私たちはこのウイルスに対して何ができたのでしょうか?逃げまどっていただけというのが正解かもしれません。では、なぜたくさんの感染症がある中で新型コロナウイルスだけが私たちの日常をこれほどの混乱に陥れたのでしょうか?
ここで、感染症とその戦いに我々が持っている武器を考えてみましょう(図)。
感染症は“ウイルスや細菌”などが何らかの“経路”で“人”に入りこんだ(感染した)結果として“症状”が出た状態です。それぞれの段階において治療や予防を行うことで人類は感染症と戦い、共存してきました。図で見ると、
“ウイルスや細菌”には抗ウイルス薬や抗菌薬を使い、原因をなくします。
“経路”を防ぐには手洗いやうがい、環境の消毒が効果的です。
ワクチンを接種することで“人”に免疫をつけます。
咳や鼻水などの“症状”をおさえるために薬を飲みます。
改めて新型コロナウイルスについて考えてみましょう。抗ウイルス薬、ワクチン、症状をおさえる薬、そのいずれも1年前の私たちは持っていませんでした。だからこそ、感染者からどのように広がるか、その“経路”を防ぐ「3密対策」が唯一の対抗策だったのです。
新しい感染症であれば、10年前、新型インフルエンザのときも大騒ぎしたではないか、という意見も聞こえてきそうです。あのときが大きく違うのはすでに大きな武器=抗ウイルス薬(タミフルⓇ)を手元に持っていたということです。
この原稿を書いている2021年3月、日本でも新型コロナウイルスに対するワクチンが始まりました。今までの日常を取り戻すための大きな一歩となることを期待しましょう。
(2021.04.26)