しんこどもクリニック
申 将守
病院の受診は子どもにとって嫌な経験になりがちです。例えば予防接種の際、嫌がる子どもに対して「わがまま言わない」と叱ったり、「痛くないから大丈夫」と思わず嘘を言ったり、暴れるからと直前まで予防接種のことを伝えない、などという対応をとってしまうことはありませんか?
現在の医療現場では、医療行為を行うには患者さんに病状を説明し十分な理解・同意を得た上で患者さんが主体的に治療を選択する「インフォームドコンセント」が不可欠です。一方で、小児医療の現場では今でも「子ども」の同意が得られることは多くありません。医療者と保護者間の話し合いで治療が進んでしまい、子どもの意思は後回しになってしまうことが多いかもしれません。
しかし、子どもにも意見を表す権利があり、最近では子どもも大人と同じように医療行為に対してできる限りの説明や同意が必要であると考えられています(子どもは大人と違って同意に対する法規制上の義務がないことから「インフォームドアセント」と呼んでいます)。
お子さんが予防接種を嫌がるのは注射に対して不安や恐怖を感じているからです。どうして注射をする必要があるのか、どのような流れで行うのか、痛みがどの程度なのか、などを事前に言葉や写真・動画などを使って共有することで子どもなりの予防接種のイメージを持つことができれば不安を和らげることにつながります。また、その中でお子さんが感じる不安への対策法(例えばお気に入りの絵本や人形を持っていく)を準備しておくことで、お子さんが前向きに予防接種に臨める可能性があります。そして接種が終わった後にたくさん褒めてあげることで子どもが「がんばれた!」という自信を持つことができれば、今後の医療行為にも協力的になってくれるかもしれません。
こどもは大人が考えている以上に、物事をこどもなりに理解して行動に移す力があります。予防接種に限らず、医療者や保護者の指示ではなく子どもが主体的に医療を受けられる環境を作っていければと願っています。
(2025.04.24)