新潟市民病院 放射線治療科 土田恵美子
負担が少ない肺癌の治療方法として定位放射線治療があります。定位放射線治療は多方向から放射線を当てる技術と治療したい部位に正確に放射線を当てる技術により、病変部に1回あたり高い線量を当てることができる治療です。短い期間に大きな線量を病変部に当てることができるため、通常の放射線治療より成績がよいと報告されています。原発性肺癌では腫瘍の最大径が5㎝以内で転移がない場合が保険適用です。腫瘍が太い気管支や大血管、食道、脊髄に近い場合や間質性肺炎がある場合、治療対象にならないことがあります。
体がぴったり入る固定具の中に仰向けに寝て両腕を挙げた状態で治療します。腫瘍の呼吸性移動が1㎝以上ある場合は何らかの方法で移動を縮小させて治療計画CTを撮影します。治療のときは治療寝台の上でコーンビームCTを毎回撮影し病変の位置を確かめます。病変の位置が決まったら放射線を当てます。1回12グレイ×4回合計48グレイの治療線量が採用されることが多いですが、太い気管支や大血管、食道、脊髄に近い場合は1回線量を少なくし治療回数を増やします。
長所は治療時の体の負担が小さいこと、短所は治療した場所には肺の線維化(肺の線維化は肺が硬くなる変化で、CTやⅩ線写真で濃い白い影になります)がおこり腫瘍はその影に埋もれてしまうため、本当に治っているかの判断が難しいことです。副作用には放射線肺炎、一時的に胸に水がたまる、肋骨骨折、胸壁の痛みなどがあります。放射線肺炎はCTやⅩ線写真で所見があっても症状がないことが多いと報告されていますが、酸素吸入を要する場合が1%、命に関わる場合も0.5~1%の頻度であると報告されています。気管支や大血管・食道などに重い副作用が生じる場合もあります。
治療成績は3年生存率が手術可能な患者さんで76%、手術できない患者さんで60%という報告があります。手術ができない場合、治療の選択肢として放射線治療専門医にご相談いただければと思います。
(2023.03.28)