
新潟白根総合病院 外科
筒井 りな
近年、高齢化が急速に進み、90歳を超える方も珍しくなくなりました。そのため、高齢の方が手術を必要とする病気にかかる機会も増えています。
私は消化器外科を専門としており、胃や大腸、胆のうなど、お腹の病気の治療を行っています。年齢を重ねると、がんになる可能性は高くなります。がんは細胞の老化とも深く関係しており、高齢になるほど発症しやすくなる病気です。特に、食べ物が通る消化管にがんができると、さまざまな症状が現れます。がんからの出血による貧血、食べ物が通りにくくなることによる食欲の低下、腸が詰まる「腸閉塞」による腹痛や嘔吐などが代表的です。
また、がん以外にも、手術が必要になる病気があります。例えば胆のう炎や虫垂炎(いわゆる盲腸)です。これらは多くの場合、適切な治療を行えば命に関わる病気ではありませんが、強い痛みや発熱などの症状があり、放置すると重症化することがあります。もし、ご自身やご家族が90歳を超えてこのような病気になったら、「年齢を考えると手術は難しいのではないか」と悩まれる方も多いでしょう。認知症などでご本人が治療方針を判断できない場合には、ご家族が大切な決断をしなければならないこともあります。
当院では、これまでに90歳以上の患者さん100名以上にお腹の手術を行ってきました。90歳を超える方は、60~70歳代の方に比べて体力や回復する力が低下しているため、手術のあとに誤嚥性肺炎や尿路感染症などの合併症が起こる可能性は、およそ2倍高くなります。一方で、こうした合併症が起こっても適切な治療を行い、手術後の回復期を乗り越えることができれば、多くの方は手術前と同じような生活に戻られています。良性の病気では年齢に応じた日常生活を送られる方が多く、がんなどの悪性の病気でも、その進行状況に応じた経過をたどることが、これまでの当院での治療経験から分かっています。
そのため、90歳を超えているからという理由だけで治療をあきらめる必要はありません。大切なのは、全身状態をしっかり評価し、病状が悪化する前に適切な治療を受けることです。
また、近年は手術技術も大きく進歩しています。以前のようにお腹を大きく切る手術だけではなく、小さな傷で行う腹腔鏡手術をはじめ、患者さんの体への負担をできるだけ少なくする方法が広く行われるようになりました。
「高齢だから手術はできない」と決めつける必要はありません。年齢だけではなく、普段の生活状況や体力、持病、そしてご本人・ご家族の希望を総合的に考えて治療方針を決めることが大切です。
(令和8年8月号)
(2026.08.28)