にいがたセントラル泌尿器科 金子 公亮
真っ赤なおしっこ(肉眼的血尿)は、いろいろな尿路疾患に付随してみられます。急な背部痛なら尿路結石、終末時排尿痛なら膀胱炎ですが、無症状に突然トイレで真っ赤なおしっこに遭遇するとびっくりすることでしょう。泌尿器科外来では、検尿とエコー検査をすることで、ある程度の病気を絞り込んで、尿細胞診(おしっこに悪性細胞が混じってないか?)を行うことが多いですが、膀胱までカメラを挿入し観察することでわかる情報も診断にとても役立ちます。
尿細胞診とは採取した検尿に特殊な染色(パパニコロウ染色といいます)を施して、沈渣中に悪性細胞の存在やその異型度を診断する検査です。クラスⅠ~Ⅴの5段階に分けられ、クラスⅠ~Ⅱは陰性、クラスⅢは疑陽性、クラスⅣ~Ⅴは陽性と判定されます。クラスⅢは膀胱炎や尿路結石などの炎症でも判定されることがあり、再検査を施行しますが、クラスⅢ以上の再判定であれば膀胱尿道カメラへと検査を進めます。大きな腫瘍や多発腫瘍・膀胱上皮内癌などでは陽性率が高いといわれておりますが、小さい単発腫瘍では陽性率は低く、尿細胞診が陰性でも肉眼的血尿が続く場合はやはり、膀胱尿道カメラでの下部尿路検査が必要です。
膀胱尿道カメラはどんな感じでやるの?って、イメージがわかない方もおられるでしょう。内視鏡室内で専用の電動リクライニングシートに乗り、軽い開脚位にて、テレビモニターをみながら尿道から膀胱内まで隅々を観察します。麻酔は特に行わずに、軟性鏡といって径6ミリほどの軟らかく曲がるカメラでからだにやさしく、適当な水圧をかけながら観察時間は数分で終了します。
高精細画像(ハイビジョン)で、膀胱内の粘膜の変化を拡大して観察できます。隆起性腫瘍性病変や発赤炎症、さらには膀胱壁の機能が低下している(おしっこを押し出すパワーが弱くなっている)場合の肉柱・憩室形成など、治療へとつなげる所見を取ります。また肥大した前立腺の形状では右葉と左葉のバランスが悪い場合や3つ目の扉といわれる中葉が形成されておしっこの流出を妨げている場合、膀胱頸部硬化症(おしっこの排出に障害となる、膀胱出口の硬い壁)や尿道狭窄症など、内服治療ではうまくいかないケースがあり、低侵襲の経尿道的内視鏡手術をおすすめして関連病院へ紹介しております。ご自身の排尿コンディションがご心配の方は、膀胱尿道カメラの検査をお近くの医療機関へご相談ください。
(2023.11.27)