わかつきクリニック
若月俊二
Q 最近主人が「やる気が出ないし、疲れやすい」と言います。うつや年のせいでしょうか?
A それは男性ホルモン(テストステロン)が極端に減っていく男性更年期障害(加齢性男性性腺機能低下症・LOH)かもしれません。その精神症状はうつ病と似ています。逆にLOHにはうつ病の患者が含まれていて、診断を難しくしています。
その他の自覚症状では、総合的に調子がよくない、関節や筋肉の痛み、ひどい発汗(ホットフラッシュ)、神経質、絶頂期が過ぎたと感じるなどがあります。自己診断のポイントとして、朝の勃起が2週間以上ないことなどが言われています。
医学的にはテストステロン値の低下を採血してみます。ポイントは血中テストステロン分泌量が午前9時頃にピークになり、夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血することとされています。
また測定値にかかわらず総合的に判断します。男性更年期障害チェックシート(AMSスコア)も診断する上で参考にされます。
Q テストステロン低下はほかにどんな影響がありますか?
A 一部の認知機能が低下します。“狩りの能力”を司る『空間認識力』や言語に関わる短期記憶『言語記憶』が低下します。
Q LOHの予防や、治療にはどんなものがありますか?
A “テストステロン”を高める具体的な方法には、
重症の場合、注射によるホルモン補充療法や、その他にPDE5阻害薬や漢方薬が使われます。
Q LOHは珍しい病気なのでしょうか?
A 元プロ野球選手のタレント(当時58歳)や元宮崎県知事(当時49歳)が悩んでいたとか八王子出身で2023年24時間マラソン走者もLOHであったとカミングアウトしています。
泌尿器科クリニックを受診する男性患者の10%程度がLOHであったという報告もあります。
しかしながら、内閣府の調査から、更年期障害症状を感じている人の多くは生活に支障を感じていても、何らかの対処法をとっている人は6割以下と少ないのです。
(2024.11.27)